命題の否定【形式論理学2】

logic 形式論理学

数学の学び直しのための記事です.

命題論理の命題の否定について記します.

命題の否定

「\(2\)は偶数ではない」という命題は,「\(2\)は偶数である」という命題\(A\)の否定であり,これを否定記号を\(\lnot\)を用いて\(\lnot A\)と書きます.

\(\lnot A\)は偽ですので,\(〚\lnot A〛=0\)です(\(〚・〛\)は命題の真理値を表します).

真理値について考えてみると,否定することによって,命題の真理値が\(1\)から\(0\)へ,あるいは\(0\)から\(1\)へ移ります.

したがって,否定は真理値を\(1\)から\(0\)へ,\(0\)から\(1\)へ移す「写像」と考えることもできます.

こうした点から,否定\(\lnot\)は真理関数(真理値の関数)の一つといえます.

注意点として,否定は念頭に置いている全体に関わっていることについても指摘すべきと考えます.

たとえば,「この花は白い」の否定,「この花は白くない」について,自然に考えると「この花は白ではない別の色である」ということです.

この花の色に関して述べている文ということですね.

それゆえ,念頭に置いている全体は「色」です.

しかしながら,「この花は白い」の否定の一例として,「この花は小さい」と言えなくもないです.

この場合は,念頭に置いている全体は,花に関して述べ得る形容詞全体,となります.

この例では,かなりこじつけのような感じもしますが,命題の否定が命題が関係する全体と関わることはご理解いただけると思います.

命題の否定を否定すると,元の命題に戻り,\(\lnot (\lnot A)\)は\(A\)と同一です.

日常の文章では,二重否定文と肯定文は異なる印象を受けますね.

例えば,「彼は仕事が速い」と「彼は仕事が速くない,というわけではない」では,前者は「仕事が速い」という狭い範囲を指示していると思いますが,後者では「仕事が速くない」という規定に当てはまらない,比較的広い範囲を指示しているようにみえます.

あるいは,「仕事が速い」は直接的,明示的な言い方であるのに対し,後者は間接的,婉曲的な言い方であるとも思います.

このような日頃の文章のニュアンスは,命題論理においては表せません.

そもそも,命題論理において扱う命題は真か偽かのどちらかであり,微妙なニュアンスを排除するからです.

命題論理について考えるときには,日頃の文章のイメージとは異なる点がこれからもいくつか現れてきますので,その都度触れようと思います.

真理表

以下のように,真理関数を表にしたものを,真理表といいます.

\(A\)\(\lnot A\)
10
01

上記の表は,\(〚A〛=1\)のとき\(〚\lnot A〛=0\),\(〚A〛=0\)のとき\(〚\lnot A〛=1\)であることを表しています.

今後,真理関数の演算を学ぶ際に基礎になりますので,真理表はとても重要です.

問題

問題1

以下の命題を否定を用いて言い換えよ.

(1) \(3\)は奇数である.

(2) 二次方程式,\(x^{2}+x+1=0\)は虚数解をもつ.

(3) 数列\(a_{n}=n\)について,\(n\rightarrow \infty\)のとき\(a_{n}\)は発散する.

解答例

(1) 奇数は偶数でない正の整数であるから,「\(3\)は偶数ではない.」

(2) 虚数は実数ではないから,「\(x^{2}+x+1=0\)は実数解をもたない.」

(3) 数列が発散するとき,ある数に収束しないので,「\(n\rightarrow \infty \)のとき\(a_{n}\)は収束しない.」

問題2

\(〚\lnot (\lnot A)〛=〚A〛\)であることを,真理表を用いて示せ.

解答例

\(\lnot (\lnot A)\)の真理表は下記の通りとなり,\(〚\lnot (\lnot A)〛=〚A〛\)である.

\(A\)\(\lnot A\)\(\lnot (\lnot A)\)
101
010

参考文献

野矢茂樹著,『論理学』

野矢茂樹著,『入門!論理学』

赤攝也著,『現代数学概論』

コメント

  1. […] 【形式論理学②】命題の否定に続きます。 […]

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