数学の学び直しのための記事です.
形式論理学の命題論理から始めます.
形式論理学は,論理的思考を鍛えるだけでなく,数学的な思考・プログラミングを行う際の思考のためにも大切です.
目次
①命題について
②真理値
③問題
④参考文献
①命題について
数学に限らず,物事を記述したり,考察したり,推論したりするために,命題は必要不可欠です.
「太郎は次郎の兄である」という文も,命題といえます.
このとき,「太郎は次郎の兄である」,という文の内容に着目するのではなく,形式に着目することが,形式論理学の始まりではないかと考えます.
すなわち,形式的には「一郎は二郎の兄である」,という文と同じである,という観点です.
形式に着目すると,「AはBの兄である」,という形式的な内容があると言えます.
AとBという人がいて,AがBの兄である,という関係があることを意味しています.
この場合,AやBのことを変項,といい,太郎や次郎はそういう名前の固有の人を指します.
他方,「太郎は次郎の兄である」は「AはBである」,とも形式化でき,この場合,「花子は太郎の母である」という文とも形式的に同等とみることができます.
このとき,Aは主語であり,Bは述語といいます.
さらに,「太郎は次郎の兄である」という命題全体を命題A,とも形式化できます.
この命題Aは内容的に「真」か「偽」と想定されます.
文自体は,「この花は美しい」や「今日は暑い」という文などのように,各人の主観によって受け取られ方が異なる可能性のある文もありますが,ここではそのような文は考察せずに,事実に基づいて真か偽として想定しうる文を命題として考察します.
このような前提で論理,すなわち命題のつながりを考察するのが,命題論理の領域です.
②真理値
「2は偶数である」という命題Aは,数学的に真です.
命題Aが真のとき,その真理値を1とします.
式では,\(〚 A 〛= 1\)と書きます.
「3は偶数である」という命題Bは,数学的に偽です.
命題Bが偽のとき,その真理値を0とします.
式では,\(〚B〛= 0\)と書きます.
上記の例では,命題の真偽が確定していますが,命題論理では命題Aの真偽がどちらでもありうるものとして考え,\(〚A〛= 0, 1\)を命題の真理値といいます.
③問題
問題1 真偽が確定していると考え得る命題を以下から選べ.
(1) 今日は雨である.
(2) この花は青い.
(3) 太郎は昨晩キャンプに行った.
(4) 太陽は東から昇る.
(5) \(2\)は素数である.
問題2 以下の命題の真偽を述べよ.
(1) 平面上の,二つの内角が等しい三角形は二等辺三角形である.
(2) \(1, 3, 5, 7, …\)は等比数列である.
問題3 以下の命題の真理値を求めよ.
(1) 命題\(A\):\(6\)に\(2\)を加えると\(8\)である.
(2) 命題\(B\):\(10\)未満の素数の和は\(17\)である.
(3) 命題\(C\):\(3x+5y=15\)を満たす自然数の組\((x,y)\)が存在する.ただし,\(0\)は自然数であるとする.
解答例
問題1
全て真偽が確定しているといえる.(1)では雨が降ったという事実,(2)では知覚に関してであるが,青いことは客観的に妥当的である,(3)では事実,(4)では普遍的事実,(5)では数学的定義に関わっている.
問題2
(1) 真 (2) 偽
問題3
(1) \(〚A〛=1\)
(2) \(〚B〛=1\)
(3) \(〚C〛=1\)
④参考文献
形式論理学に関する参考文献を以下に挙げます.
野矢茂樹著,『論理学』
野矢茂樹著,『入門!論理学』
赤攝也著,『現代数学概論』
長岡亮介著,『論理学で学ぶ数学』