連言と選言【形式論理学3】

logic 形式論理学

数学の学び直しの記事です.

本記事では,命題論理の連言と選言について考察します.

連言

連言とは,命題\(A\)かつ命題\(B\),ということです.

たとえば,「\(3\)は奇数であり,かつ素数である」などの命題です.

「\(3\)は奇数である」という命題\(A\)と,「\(3\)は素数である」という命題\(B\)を用いて,上記の命題は\(A \land B\)と書きます.

上記の例では,\(A \land B\)は真ですので,\(〚A \land B〛=1\)です(\(〚・〛\)は命題の真理値).

\(A \land B\)の真理表は,下記の通りになります.

\(A\)\(B\)\(A \land B\)
111
100
010
000

上記の表は,\(〚A〛=〚B〛=1\)のとき\(〚A \land B〛=1\),\(〚A〛\)と\(〚B〛\)のどちらかが\(0\)のとき\(〚A \land B〛=0\)であることを表しています.

選言

選言とは,命題\(A\)または命題\(B\),ということです.

これを,\(A \lor B\)と書きます.

\(A \lor B\)の真理表は,下記の通りになります.

\(A\)\(B\)\(A \lor B\)
111
101
011
000

上記の表は,\(〚A〛\)と\(〚B〛\)のどちらかが\(1\)であるとき\(〚A \lor B〛=1\),\(〚A〛=〚B〛=0\)のとき\(〚A \lor B〛=0\)であることを表しています.

ここで,日本語の「あるいは」,「か」の用法を考えてみます.

「太郎か次郎に依頼する」という文では,「太郎か次郎のどちらか」であり,「太郎と次郎の両方に依頼する」ことは普通は意味しません.

しかしながら,\(A \lor B\)では\(A\)と\(B\)の双方も含みます.

日本語の「あるいは」,「か」の用法の意味に近いのは,排他的選言,\(A⊻B\)です.

排他的選言の真理表を下記に記します.

\(A\)\(B\)\(A⊻B\)
110
101
011
000

排他的選言では,\(〚A〛=〚B〛=1\)のとき\(〚A⊻B〛=0\)となります.

原子命題と分子命題

連言や選言で,命題を組み合わせることが可能となりました.

組み合わされていない命題を原子命題,原子命題を組み合わせてできた命題を分子命題といいます.

\(A\)は原子命題で,\(\lnot A\)や\(A \land B\),\(A \lor B\),\(A⊻B\)は分子命題です.

では,「彼は欠席である」は原子命題でしょうか?

確かに,「彼は欠席である」を命題\(A\)として,原子命題といえるでしょうが,「彼は出席している」を命題\(B\)として,\(\lnot B\)と考えて分子命題とも見ることができます.

他にも,「彼は新人教師である」も,「彼は教師である」という命題\(C\)と「彼は新人である」という命題\(D\)の連言\(C \land D\)と考えるのが自然ですが,「彼は新人教師である」という命題\(E\)と考えることも可能といえば可能です.

それゆえ,原子命題と分子命題という分け方は絶対的なものではないのですが,命題を考察する際の観点により変わります.

ただし,数学の命題においては,原子命題は「一つの」命題で表されるでしょう.

たとえば,「\(3\)は奇数である」は原子命題ですし,「\(3\)は奇数でありかつ素数である」は分子命題です.

真理表を見ますと,原子命題が左に書いてあって,分子命題が右に書いてあります.

原子命題原子命題分子命題
\(A\)\(B\)\(A \land B\)
111
100
010
000

否定や連言,選言などを,真理値\(1\),\(0\)の関数(真理関数)として捉えたときに,元の命題が原子命題,移された命題が分子命題と考えられます.

論理和と論理積

命題論理においては,真理値の演算と考えて,連言は論理積(真理値の乗法),選言は論理和(真理値の加法)とみなすことが可能です.

排他的選言では,\(〚A〛=〚B〛=1\)のとき\(〚A⊻B〛=0\)でした.

これは,\(1+1=2=10\)(二進数)と考え,その一桁目と考えることができます.

ちなみに二桁目は\(〚A \land B〛\)となります.

このように,命題の真理値の演算からシンプルな代数の構造を導き出すことができます.

連言・選言と否定

連言,選言と否定を組み合わせて,いろいろな分子命題をつくることができます.

その中でも簡単なものとして,\(\lnot (A \land B)\)を考察します.

真理表を下に記します.

\(A\)\(B\)\(A \land B\)\(\lnot (A \land B)\)
1110
1001
0101
0001

「\(A\)かつ\(B\)ではない」,ということは,「\(A\)でないか\(B\)でない」ということになりますので,\(\lnot A \lor \lnot B\)と同じになりそうです.

\(\lnot A \lor \lnot B\)という命題の真理表は以下の通りです.

\(A\)\(B\)\(\lnot A\)\(\lnot B\)\(\lnot A \lor \lnot B\)
11000
10011
01101
00111

\(〚\lnot (A \land B)〛=〚\lnot A \lor \lnot B〛\)であることがわかります.

これは,ド・モルガンの法則とよばれる関係です.

否定,連言,選言を用いた複雑な命題を簡単にすることができます.

形式論理学1-4,「条件法と同値」に続きます.

問題

問題1

以下の式が成り立つことを真理表を用いて示せ.

(1) \(〚A∧A〛=〚A〛\)

(2) \(〚A∨A〛=〚A〛\)

(3) \(〚A∧(B∧C)〛=〚(A∧B)∧C〛\)

(4) \(〚A∨(B∨C)〛=〚(A∨B)∨C〛\)

(5) \(〚A∨(B∧C)〛=〚(A∨B)∧(A∨C)〛\)

(6) \(〚A∧(B∨C)〛=〚(A∧B)∨(A∧C)〛\)

解答例

(1) \(A∧A\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(A∧A\)
11
00

真理表から\(〚A∧A〛=〚A〛\)である.

*これを演算\(∧\)に関する冪等律という.

(2) \(A∨A\)の真理表は以下の通り

\(A\)\(A∨A\)
11
00

真理表から\(〚A∨A〛=〚A〛\)である.

*これを演算\(∨\)に関する冪等律という.

(3) \(A∧(B∧C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(B∧C\)\(A∧(B∧C)\)
11111
11000
10100
10000
01110
01000
00100
00000

\((A∧B)∧C\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(A∧B\)\((A∧B)∧C\)
11111
11010
10100
10000
01100
01000
00100
00000

真理表から,\(〚A∧(B∧C)〛=〚(A∧B)∧C〛\)である.

*これを演算\(∧\)に関する結合法則という.

\(〚A∧(B∧C)〛=〚(A∧B)∧C〛=〚A∧B∧C〛\)と書ける.

(4) \(A∨(B∨C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(B∨C\)\(A∨(B∨C)\)
11111
11011
10111
10001
01111
01011
00111
00000

\((A∨B)∨C\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(A∨B\)\((A∨B)∨C\)
11111
11011
10111
10011
01111
01011
00101
00000

真理表から,\(〚A∨(B∨C)〛=〚(A∨B)∨C〛\)である.

*これを演算\(∨\)に関する結合法則という.

\(〚A∨(B∨C)〛=〚(A∨B)∨C〛=〚A∨B∨C〛\)と書ける.

(5) \(A∨(B∧C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(B∧C\)\(A∨(B∧C)\)
11111
11001
10101
10001
01111
01000
00100
00000

\((A∨B)∧(A∨C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(A∨B\)\(A∨C\)\((A∨B)∧(A∨C)\)
111111
110111
101111
100111
011111
010100
001010
000000

真理表から,\(〚A∨(B∧C)〛=〚(A∨B)∧(A∨C)〛\)である.

*これを,演算\(∧\)と\(∨\)に関する分配法則という.

(6) \(A∧(B∨C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(B∨C\)\(A∧(B∨C)\)
11111
11011
10111
10000
01110
01010
00110
00000

\((A∧B)∨(A∧C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(A∧B\)\(A∧C\)\((A∧B)∨(A∧C)\)
111111
110101
101011
100000
011000
010000
001000
000000

真理表から,\(〚A∧(B∨C)〛=〚(A∧B)∨(A∧C)〛\)である.

*これも,演算\(∧\)と\(∨\)に関する分配法則という.

参考文献

野矢茂樹著,『論理学』

野矢茂樹著,『入門!論理学』

赤攝也著,『現代数学概論』

コメント

  1. […] 【形式論理学③】連言と選言に続きます。 […]

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