集合の相等と包含【集合論1-2】

数学

数学の学び直しの記事です.

集合の相等と包含について記します.

目次

①集合の相等

②集合の包含関係

③問題

④参考文献

①集合の相等

以前に集合の外延的記法と内包的記法に関して記しましたが,たとえば集合\(A=\{2, 4, 6, …, 2n, …\}\)(\(n\)は正の整数)と集合\(B=\{n|\)正の整数\(n\)は偶数\(\}\)は同じ集合を表します.

これを,\(A=B\)と表します.

このとき,集合が等しいということは,二つの集合がそれらの元を共有して,一方の集合の元が他方の集合に属しないことがない,ということになります.

これを言い換えますと,集合\(A\)\(B\)が等しいとは,集合\(A\)に属する元\(x\)が集合\(B\)に属し,かつ集合\(B\)に属する元\(y\)が集合\(A\)に属する,となります.

これは論理記号を用いて記すと,以下のようになります.

\((\forall x\in A, x\in B)\land (\forall y\in B, y\in A)\)

\(\forall \)は全称記号で「すべての」,という意味で,\(\land \)は連言の論理記号で「かつ」という意味です.(詳しくは,形式論理学を参照)

論理記号を用いると,数学的命題は著しく簡潔に表現できますので,今後少しづつご紹介していきます.

集合の元が命題で表記されている場合に,\(A=\{x|A(x)\}, B=\{x|B(x)\}\)に対して,命題\(A(x)\)と\(B(x)\)が同値であること\((A(x) \Leftrightarrow B(x))\)を示すことができると,結果的に\(A=B\)であることになりますが,それは命題が同値であるから集合が同一である,ということではなく,あくまで集合が元を共有するから同一です.

②集合の包含関係

集合\(A\)と\(B\)に対して,\(A\)の元のすべてが\(B\)の元でもあるとき,\(A\)は\(B\)の部分集合であるといい,\(A \subset B\)と書きます.

また,\(A\)は\(B\)に含まれるともいいます.

\(A\)のすべての元\(x\)に対して,\(x\)は\(B\)に属する,とも言えます.

\(\forall x \in A, x \in B\)とも書けます.

前節の集合の相等は,\((\forall x \in A, x \in B) \land (\forall y \in B, y \in A)\)ということでしたので,\((A \subset B) \land (B \subset A)\)であることと\(A=B\)であることは同一のことであるといえます.

実際,\(A=B\)であることを証明するとき,\(A \subset B\)と\(B \subset A\)が同時に成り立つことを証明することによって示すことがあります.

\(A \subset B\)であることは,\(A=B\)である可能性もあります.

\(A \subset B\)であり,かつ\(B \subset A\)でない場合,\(A\)は\(B\)の真部分集合であるといいます.

包含関係において重要な性質として推移性があり,これは以下の命題が成り立つことです.

\(A \subset B\)であり,かつ\(B \subset C\)であるならば\(A \subset C\).

簡単に証明しますと,\(A\)のすべての元\(x\)に対して\(x \in B\)であり,かつこの\(B\)の元\(x\)に対して\(x \in C\)であるから,\(A\)のすべての元\(x\)に対して\(x \in C\)である,となります.

\((\forall x \in A, x \in B) \land (x \in B, x \in C)\)

\(\Rightarrow \forall x \in A, x \in C\)

③問題

問題1 以下の二つの集合はたがいに等しいか?

(1) \(A=\{4, 5, 6, 7\}\)と\(B=\{n|3 < n ≦ 7, n \in \mathbb{N}\}\)

(2) \(C=\{2, 5, 7, 11\}\)と\(D=\{n|n\)は\(12\)以下の素数\(\}\)

問題2 以下の二つの集合が相等しいことを示せ

(1) \(A=\{2, 4, 6, 8\}\)と\(B=\{6, 2, 4, 8\}\)

(2) \(C=\{x|x^2-1<0, x \in \mathbb{R}\}\)と\(D=\{x|x^4-1<0, x \in \mathbb{R}\}\)

問題3 以下の二つの集合は包含関係にあるか?

(1) \(A=\{x|-2<x<4, x \in \mathbb{R}\}\)と\(B=\{y|2<y<3, y \in \mathbb{R}\}\)

(2) \(C=\{x|-3<x<7, x \in \mathbb{R}\}\)と\(D=\{n|n<6, n \in \mathbb{N}\}\)

解答例

問題1

(1)集合\(B\)に関して,\(3<n≦7, n \in \mathbb{N}\)を満たす\(n\)は,\(n=4, 5, 6, 7\)

したがって,\(\forall n \in A\)に対して\(n \in B\),かつ\(\forall m \in B\)に対して\(m \in A\)であり,\(A=B\)

(2)集合\(B\)に関して,\(12\)以下の素数\(n\)は,\(n=2, 3, 5, 7, 11\)

したがって,ある\(B\)の元,\(3\)に対して\(3 \notin A\)であるから\( A \neq B\)

問題2

(1) すべての\(A\)の元\(n\)に対して,\(n \in B\)であり,かつすべての\(B\)の元\(m\)に対して,\(m \in A\)である.それゆえ,\(A=B\)である

(2) 集合\(D\)について,\(x^4-1<0 \Leftrightarrow (x^2-1)(x^2+1)<0\)であり,\(x\)は実数であるから\(x^2+1>0\),すなわち\(x^4-1<0 \Leftrightarrow x^2-1<0\)である.したがって,すべての\(C\)の元\(x\)に対して,\(x \in D\),すべての\(D\)の元\(y\)に対して,\(y \in C\)である.それゆえ,\(C=D\)

問題3

(1)\(\forall x \in B\)に対し,\(-2<x<4\)であるから,\(x \in A\),したがって\(B \subset A\).\(3.5 \in A\)であるが,\(3.5 \notin B\)であるから,\(A \subset B\)は成り立たない.

(2)\(\forall n \in D\)に対して\(-3<n<7\)であるから,\(n \in C\),したがって\(D \subset C\).\(-1 \in C\)に対し,\(-1 \notin D\)であるから,\(C \subset D\)は成り立たない.

④参考文献

集合論に関する参考文献を以下に挙げます.

松坂和夫著,『集合・位相入門』

赤攝也著,『集合論入門』

コメント

  1. […] 「集合論②、集合の相等と包含」へ […]

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