量化子【形式論理学10】

logic 形式論理学

論理学を学ぶ記事です.

本記事では,量化子について説明します.

量化子

ある命題が全ての対象について主張される場合と,少なくとも一つの対象について主張される場合があります.

そのような命題を表す場合に,量化子を用います.

量化子には「全ての」を意味する\(\forall\)(全称記号)と,「ある」,「存在する」を意味する\(\exists\)(特称記号)があります.

命題関数

これまでの命題では命題全体を命題\(A\)としていました.

「\(2\)は偶数である」という命題の\(2\)を変数\(n\)にして,「\(n\)は偶数である」というような変数を含む命題を作ることができます.

量化子を用いる状況では,例えば「全ての実数\(x\)に対して,\(x\)に関する命題が成り立つ」とか,「ある実数\(x\)に対して,\(x\)に関する命題が成り立つ」といった形になります.

これまで,命題を単に\(A\)などとしていたのですが,\(x\)についての命題\(A(x)\)とします.

\(x\)には特定の数が入るのではなく,入り得る全ての数が入ります.

\(A(x)\)は\(x\)を変数とする命題関数となります.

「全ての実数\(x\)に対して,命題\(A(x)\)が成り立つ」という文は,\(\forall x\in\mathbb{R}, A(x)\)と書けます.

「ある実数\(x\)が存在して,命題\(A(x)\)が成り立つ」という文は,\(\exists x\in \mathbb{R}, A(x)\)と書けます.

上記のように,量化子記号を用いるとさらに簡潔に命題を書くことができますので,とても便利です.

恒等式と方程式

恒等式とは,変数がどんな数値をとっても成立する式です.

例えば,\(ax^2+bx+c=0\)が実数\(x\)について恒等式である場合,\(\forall x\in \mathbb{R}, ax^2+bx+c=0\)と書けます.

方程式とは,ある特定の未知数を含む等式です.

全ての実数\(x\)について成り立つのではなく,ある特定の\(x\)について成り立ちますので,例えば\(\exists x\in \mathbb{R}, 2x^2+7x-4=0\)などと書けます.

ここで重要なのは,特称命題,\(\exists x A(x)\)は,命題関数\(A(x)\)を満たす\(x\)の値が何かについては一切触れないということです.

また,\(\exists x A(x), \exists x B(x)\)という論理式があった場合,\(A(x)\)を満たす\(x\)の値と\(B(x)\)を満たす\(x\)の値は同じであるかもしれないし,異なるかもしれません.

この点については,より複雑な論理式を考察する場合に注意すべきです.

命題関数と真理値

命題論理の場合は,命題\(A\)が真理値\(1\)か\(0\)をとりましたが,命題関数の場合は,変数\(x\)の値によって\(A(x)\)の真理値が\(1\)であったり,\(0\)であったりします.

\(A(x)\)の真理値が\(1\)であるような\(x\)の集合を真理集合といいます.

量化子を伴う命題の考え方

全称記号の場合,例えば\(\forall n\in \{1,2,3\}, A(n)\)という命題は,\(n=1\)であるときも,\(n=2\)であるときも,\(n=3\)であるときも\(A(n)\)が成り立つということですから,\(A(1) \land A(2) \land A(3)\)ということになります.

このように,全称記号は連言と関連付けて考えることができます.

特称記号の場合は,\(\exists n\in \{1,2,3\}, A(n)\)という命題は,\(n\)が少なくとも\(1\)か\(2\)か\(3\)のいずれかであるときに\(A(n)\)が成り立つということですから,\(A(1) \lor A(2) \lor A(3)\)ということになります.

特称記号は選言と関連付けて考えることができます.

参考文献

形式論理学に関する参考文献を以下に挙げます.

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野矢茂樹著,『論理学』

長岡亮介著,『論理学で学ぶ数学』

赤攝也著,『現代数学概論』

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