形式論理学についての解説の記事です.
ここではある命題を根拠に他の命題を主張する「論証」について解説します.
論証
論証というのは,ある命題を根拠にしてある主張を行うことです.
例えば,「Aさんを駅前で見かけた,だから今はAさんは家にいない」,という文章です.
記号で書くと以下のようになります.
\(A \Rightarrow B\)
\(B\)という命題を証明する問題で,\(A\)という命題から\(B\)を導く場合も論証です.
\(A \Rightarrow B\)は,\(A\)であるときは\(B\)となるであろう,といった具合に,「推論」と考えられることもあります.
妥当性
論証においては,命題の真偽よりも論証そのものの妥当性が重視されます.
この妥当性とは,根拠とされる命題が結論の根拠として妥当かどうか,ということです.
例えば,「Aさんは今駅前にいる,だからAさんは今彼の家にいない」という論証は妥当です.
この場合は,Aさんは同時に異なる二つの場所にいることができないので,論理的な意味で妥当です.
論証の妥当性は,「Aさんが今駅にいる」,という命題の真偽には依存しません.
むしろ,「Aさんが今駅にいる」という命題が真であることによって,「Aさんは今彼の家にいない」という結論が真として定まるという関係に着目しています.
「Aさんは数学が好きだから,数学の成績が良い」という論証は論理的には妥当ではありません.
というのも,論理的には数学が好きであることと数学の成績が良いことは全く別の事柄だからです.
しかし,経験的には妥当性があるかもしれません.
「Aさんは数学をよく勉強しているから,数学の成績が良い」という論証は論理的には妥当ではありませんが,先ほどの論証よりは妥当性がありそうです.
というのも,よく勉強した結果成績が良いという関係に因果性があるからです.
ただし,よく勉強しても成績が悪い可能性もあります.
以上ように,論証の妥当性はいろいろな意味合いがあります.
数学における論証の例
論証について慣れるために,数学における論証の例を挙げていきます.
偶数についての論証.
\(2\)で割り切れる自然数は偶数であるが,\(6=2\times3\)である.したがって,\(6\)は偶数である.
連続する三つの自然数の和は\(3\)の倍数であることの論証.
連続する三つの自然数の和は最小の自然数を\(n\)とすると\(n+n+1+n+2=3n+3=3(n+1)\)であるから,連続する三つの自然数の和は\(3\)の倍数である.
参考文献
参考文献を紹介します.
以下はアフィリエイト広告です.
野矢茂樹著,『論理学』
長岡亮介著,『論理学で学ぶ数学』