集合の基本概念【集合論1-1】

数学

集合論は、数学の基礎を支える重要な理論で、数やオブジェクトを整理し、分類するための手法です。集合論の基本概念について学ぶことで、数学や論理学の幅広い分野での理解が深まります。

集合とは何か?

集合とは、ある特定の条件に基づいて集められた「要素」の集まりのことを指します。要素は物や数、記号など、さまざまな対象が含まれる可能性があります。集合の概念は直感的で、日常生活でも「クラスの学生の集まり」や「リンゴの集まり」などとしてイメージできるものです。

数学的な集合は、厳密に定義されたオブジェクトの集まりであり、対象がある集合に含まれるかどうかが明確に決まります。例えば、自然数全体の集合や、特定の国に住んでいる人々の集合などがあります。

要素と集合の表記

集合や要素の表記には、いくつかの一般的なルールがあります。

集合の表記

集合は通常、アルファベットの大文字で表されます。例えば、集合 \(A\)、\(B\)、\(C\) などと表記します。

要素の表記

集合に含まれるオブジェクト、つまり要素は小文字や具体的な数字、記号で表されます。要素 \(a\)、\(b\)、\(1\)、\(x\) などがあります。

要素の記述方法

集合に含まれる要素は、波括弧を使って列挙します。たとえば、集合 \(A = \{1, 2, 3\}\) は、要素が\(1, 2, 3\)の集合を意味します。

集合の要素を表す記号

要素が集合に含まれることを「\(\in\)」で表し、含まれないことを「\(\notin\)」で表します。たとえば、「\(1\) は集合 \(A\) に含まれる」という文は、 \(1 \in A\) となり、「\(4\) は集合 \(A\) に含まれない」は \(4 \notin A\) となります。

集合の表し方

外延的記法

外延的記法(列挙的記法)では、集合に含まれる要素を一つ一つ列挙して表します。この方法は、要素が少数で具体的に分かっている場合に有効です。

  • 例: 自然数\(1, 2, 3\)からなる集合 \(A\) を外延的に表すと、 \(A = \{1, 2, 3\}\) となります。ここでは、集合に含まれる全ての要素が列挙されています。

内包的記法

内包的記法(条件的記法)では、集合に含まれる要素が満たす条件を示して表します。この方法は、要素が多かったり無限であったりする場合に便利です。

  • 例: \(n\)が自然数であり、\(1\)以上\(3\)以下であるという条件を満たす集合 \(B\) を内包的に表すと、 \(B = \{x \mid 1 \leq x \leq 3, \, x \in \mathbb{N}\}\) となります。ここで、縦線「\(\mid\)」は「〜という条件を満たす」という意味で、要素 \(x\) が条件 \(1 \leq x \leq 3\) を満たすことを示しています。

集合と命題の関係:内包的記法と命題関数

内包的記法では、集合を命題関数によって表すことができます。命題関数は、変数に対して「真」または「偽」の値を返す関数です。

例えば、内包的記法で集合 \(A = \{x \mid x \text{ は偶数}\}\) と表す場合、「\(x \text{ は偶数}\)」という条件は、命題関数 \(P(x)\) に相当します。命題関数 \(P(x)\) が「真」であるとき、その\(x\)は集合\(A\)の要素であり、偽であれば集合に含まれません。

具体的には、次のように命題関数を使って表すことができます。\(A = \{x \mid P(x)\}\)

ここで、\(P(x)\) は「\(x\) が偶数である」という命題を表しています。このため、集合 \(A\) に属する要素は、命題 \(P(x)\) が「真」である \(x\) に限られます。

集合と命題の関係の重要性

命題関数による集合の表現は、論理学や数学の基礎で非常に重要です。特定の条件を満たす要素がどれかを判断する際、命題関数の「真偽」が要素の集合への所属を決定する基準となります。

集合の相等

二つの集合が等しいとは、ある集合 \(A\) と集合 \(B\) が同じ要素を持つことを意味します。つまり、どちらの集合の要素も互いに一致している状態を指します。これを形式的に述べると、次の条件が成り立つとき、集合 \(A\) と集合 \(B\) は等しいといえます。\(A = B \iff (\forall x \, (x \in A \iff x \in B))\)

この表現は、「集合 \(A\) の任意の要素 \(x\) が集合 \(B\) にも含まれ、逆に集合 \(B\) の任意の要素 \(x\) も集合 \(A\) に含まれる」ことを意味しています。すなわち、集合 \(A\) に含まれる要素は全て集合 \(B\) に含まれ、集合 \(B\) に含まれる要素は全て集合 \(A\) に含まれるとき、二つの集合は等しいといいます。

具体例で説明すると、もし集合 \(A = \{1, 2, 3\}\) と集合 \(B = \{3, 2, 1\}\) があったとします。この場合、順序は異なりますが、含まれている要素が全て同じなので、\(A = B\) となります。

全体集合と空集合

集合論では、いくつかの特別な種類の集合もあります。

全体集合

全体集合(universal set)は、特定の文脈や問題で考慮する全ての要素を含む集合です。通常、全体集合は \(U\) で表されます。たとえば、自然数の集合を考えている場合、全体集合 \(U\) は自然数全体を指します。

空集合

空集合(null set)は、要素を一切持たない集合です。つまり、何も含まれていない集合を指します。空集合は、記号 \(\emptyset\) または \(\{\}\) で表されます。例えば、「\(2\)以外の素数で偶数の集合」といったものは、\(2\)以外に素数で偶数は存在しないため、空集合になります。

集合の要素の個数

集合の要素の個数は、その集合の「濃度」や「基数」と呼ばれることがあります。要素が有限個の場合、要素の個数を簡単に数えることができます。

有限集合の要素の個数

要素が有限個の集合の場合、要素の個数は単にその集合の要素を数えるだけです。例えば、集合 \(A = \{1, 2, 3\}\) の要素の個数は3です。これを \(|A| = 3\) と表記します。

無限集合

要素が無限に存在する集合もあります。たとえば、自然数全体の集合 \(\mathbb{N} = \{1, 2, 3, \dots\}\) は無限集合です。無限集合の要素数を数えることはできませんが、集合論では「可算無限」と「非可算無限」といった概念を用いて無限集合の種類を区別します。

整数全体の集合は\(\mathbb{Z}\)、有理数全体の集合は\(\mathbb{Q}\)、実数全体の集合は\(\mathbb{R}\)、複素数全体の集合は\(\mathbb{C}\)とかきます。

問題

以下の内包的記法で表された集合を、外延的記法で表せ。

(1) \(A=\{n\in \mathbb{Z}|-1<n<5\}\)

(2) \(B=\{x\in \mathbb{R}|x^2-4x+4=0\}\)

解答例:クリックして表示
(1) \(A=\{0,1,2,3,4\}\) (2) \(B=\{2\}\)

参考文献

参考文献を紹介します。

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