真理値分析【形式論理学5】

logic 数学

このページでは,これまで扱った論理記号をまとめ,さまざまな複雑な分子命題の真理値を求める真理値分析を扱います.

目次

①命題論理の論理記号のまとめ

➁真理値分析

③論理記号の結合の順番について

④問題

⑤参考文献

①命題論理の論理記号のまとめ

命題論理の論理記号として,これまで\( \lnot\)(否定),\( \land\)(連言),\( \lor\)(選言),\( \Rightarrow\)(条件法),\( \Leftrightarrow\)(同値)を紹介しました.

これらの真理表も改めて表記します.

\( \lnot\)の真理表.

\(A\)\(\lnot A\)
10
01

\( \land, \lor, \Rightarrow, \Leftrightarrow \)の真理表.

\(A\)\(B\)\(A \land B\)\(A \lor B\)\(A \Rightarrow B\)\(A \Leftrightarrow B\)
111111
100100
010110
000011

これまでのページで,複雑な分子命題の真理値を計算する真理値分析をすでに行ってきたのですが,ここでより詳しくその方法を解説いたします.

➁真理値分析

いくつかの論理記号で結合された分子命題の真理値を計算することを,真理値分析といいます.

そのやり方をここで説明します.

例:\(A \land (\lnot B \Rightarrow A)\)

論理式に()が含まれている場合は,()の中を先に検討しなければなりません.

\(\lnot B\)が含まれているので,これを真理値分析します.

\(\lnot B\)の真理値分析.

\(A\)\(B\)\( \lnot B\)
110
101
010
001

表の左に原子命題である\(A\)と\(B\)の真理値を記入します.

上記のように書くのが一般的です.二進法の表記で\(0\)から\(3\)まで上がっていくかのように見えますね.

原子命題の右に\( \lnot B\)の真理値を記入します.

\( \lnot \)(否定)は,\(B\)の真理値が\(1\)のとき\(0\),\(0\)のとき\(1\)でした.それで,上記のようになります.

次に,\(\lnot B \Rightarrow A\)の真理値分析をします.

\(\lnot B \Rightarrow A\)の真理値分析.

\(A\)\(B\)\(\lnot B\)\(\lnot B \Rightarrow A\)
1101
1011
0101
0010

先ほどの表の右端に\(\lnot B \Rightarrow A\)の列を付け足すわけです.

そして,\(\Rightarrow\)(条件法)では,条件節が真なら帰結節が真のとき真・偽のとき偽,条件節が偽なら帰結節の真偽を問わず真でした.したがって,\(\lnot B\)が真なら\(A\)が真のとき真・偽のとき偽,\(\lnot B\)が偽なら\(A\)の真偽を問わず真であり,上記のようになります.

最後に,\(A \land (\lnot B \Rightarrow A)\)の真理値分析です.

下記のようになります.

\(A\)\(B\)\(\lnot B\)\(\lnot B \Rightarrow A\)\(A \land (\lnot B \Rightarrow A)\)
11011
10111
01010
00100

\(A\)と\(\lnot B \Rightarrow A\)が両方真のとき\(A \land (\lnot B \Rightarrow A)\)は真,それ以外のとき偽となり,上記のようになります.

このようにして,どんな複雑な論理式も真理値分析できます.

③論理記号の結合の順番について

複雑な論理式では,()が必要な場合があります.

例えば,論理式\(A \Rightarrow B \lor \lnot C\)の場合,\(A\)と\(B\)が結合された後\(C\)が結合するのか,\(B\)と\(C\)が結合された後\(A\)が結合するのかの二通りがあります.

つまり,\((A \Rightarrow B) \lor \lnot C\)と\(A \Rightarrow (B \lor \lnot C)\)の二通りです.

そこで,()がある場合は,()の中の論理命題を先に真理値分析し,その後に全体を真理値分析します.

ただし,\( \Leftrightarrow\)に関しては,その右の全体の命題と左の全体の命題を同値関係とする,という規則があります.

例えば,\(A \Leftrightarrow \lnot B \lor C\)は,\((A \Leftrightarrow \lnot B) \lor C\)と解釈するのではなく,\(A \Leftrightarrow (\lnot B \lor C)\)と解釈する決まりです.

方程式\(3x^2+4x-5=0\)において,\(3x^2+4x+(-5=0)\)と解釈しないのと同様です.

④問題

問題1. 次の論理式を真理値分析せよ.

(1) \(A \land (A \lor B)\)

(2) \( \lnot A \lor (B \Rightarrow (\lnot A \land B))\)

(3) \(( A \Rightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor C)\)

(4) \(( A \Leftrightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor \lnot B)\)

解答例

問題1. 

(1) \(A \land (A \lor B)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(A \lor B\)\(A \land (A \lor B)\)
1111
1011
0110
0000

(2) \( \lnot A \lor (B \Rightarrow (\lnot A \land B))\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(\lnot A\)\(\lnot A \land B\)\(B \Rightarrow (\lnot A \land B)\)\(\lnot A \lor (B\Rightarrow (\lnot A \land B))\)
110000
100011
011111
001011

(3) \(( A \Rightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor C)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(C\)\(\lnot B\)\(A \Rightarrow \lnot B\)\(A \lor C\)\((A \Rightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor C)\)
1110011
1100011
1011111
1001111
0110111
0100100
0011111
0001100

(4) \(( A \Leftrightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor \lnot B)\)の真理表は以下の通り.

\(A\)\(B\)\(\lnot B\)\(A \Leftrightarrow \lnot B\)\(A \lor \lnot B\)\((A \Leftrightarrow \lnot B) \Rightarrow (A \lor \lnot B)\)
110011
101111
010100
001011

⑤参考文献

野矢茂樹著,『論理学』

野矢茂樹著,『入門!論理学』

赤攝也著,『現代数学概論』

長岡亮介著,『論理学で学ぶ数学』

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