命題の構成要素【形式論理学入門1-2】

logic 形式論理学

形式論理学の学習の記事です。本記事では形式論理学の基礎である命題の構成要素について説明します。

主語と述語

命題には主要な構成要素として主語(subject)と述語(predicate)があります。

主語は命題で主張される対象であり、述語は主語が該当するといわれる属性です。

「その車は赤い」という命題では、主語が「その車は」で、述語が「赤い」です。

この命題において、「その車」について、それが「赤い」という属性に該当するということが言われています。

こうした命題は属性命題(predicative proposition)とよばれます。

主語を\(s\)とし、述語を\(p\)とすると、命題は\(p(s)\)とかくことができます。

述語を満たす要素からなる集合(属性集合)を\(S_p\)とすると、\(s\in S_p\)が成り立ちます。

ここで、\(\in\)はある対象が集合の要素として含まれることを意味する記号です。

\(s\)は\(S_p\)に属する、と読みます。

他方で、「円周率は\(\pi\)に等しい」などの命題は同一性命題(proposition of identity)とよばれます。

属性命題と同一性命題は異なることに注意が必要です。同一性命題では「\(s\)は\(t\)である」という形で、\(s=t\)が成り立ちます。

さらに、同一性命題では重要な性質、反射律(reflexive law)\(s=s\)、対称律(symmetric law)\(s=t\)ならば\(t=s\)、推移律(transitive law)\(s=t\)かつ\(t=u\)ならば\(s=u\)が成り立ちます。

これらは同値関係の公理とよばれています。属性命題ではこれらの性質は成り立ちません。

命題を見るときに、主語が述語の示す属性をもつのかどうか、命題が同一性を主張しているのかどうかに注意してみるとよいでしょう。

命題において主語と述語を分ける簡単な方法は、主語をまず限定し、それ以外の部分を述語とみることです。

例えば、「彼は学校で講義を受ける」という命題では、「彼は」を主語とし、「学校で講義を受ける」を述語とします。

主語が命題に適切でない場合も考えられます。たとえば、有理数\(r\)に対して\(r=\sqrt{2}\)という命題は、\(\sqrt{2}\)が無理数であることから真偽の判断以前的に適していないように思えます。

こうした場合の態度として、こうした場合も命題としては偽であるとする立場(古典的命題論理の立場)と、不適合な場合として別に考察する場合があります。その場合、真理値が真、偽、不適合の三種類を有する多値論理の一種と考えることもできます。

例題 次の文において主語と述語を示せ。

(1) その車は黒い。

(2) 彼女の傘は白い。

(3) 今日の天気は雨だ。

(4) 午前中の授業は休講だった。

(5) 講義で取り上げられた作品は、その作家の青年期のものだった。

解答例 (1) 主語:「その車は」、述語:「黒い」

(2) 主語:「彼女の傘は」、述語:「白い」

(3) 主語:「今日の天気は」、述語:「雨だ」

(4) 主語:「午前中の授業は」、述語:「休講だった」

(5) 主語:「講義で取り上げられた作品は」、述語:「その作家の青年期のものだった」

世界

「彼は学校で講義を受ける」という命題は、「学校で」という副詞句を独立させることもできます。

論理学では副詞句や副詞節を独立させて世界(world)\(w\)と考えます。

「学校で」という世界において「彼は講義を受ける」、ということです。

記号で表す場合、\(p(s) \space in \space w, \space p(s,w)\)などの表記がありますが、本記事では\(p_w(s)\)と表すことにします。

以上のように、命題を記号で表す方法は3通りあります。

命題全体をまとめて\(P\)と表す方法、主語と述語によって\(p(s)\)と表す方法、様態の副詞句を世界として独立して表す方法、\(P_w\)と\(p_w(s)\)です。

これらのうちどれがいいのかは、命題を考察する観点で異なります。

単純に命題相互の関係を考える場合は命題を一文字で表した方が簡便でいいでしょうし、主語だけがいろいろと変わる場合には\(p(s),p(t),\dots\)などのように表記したほうがいいでしょうし、主語が共通する命題を考える場合には\(p(s),q(s),\dots\)などのように表記したほうがいいでしょうし、同一命題をいろいろな世界で考える場合には\(P_{w_1},P_{w_2},\dots\)などのように表記するのがいいでしょう。

\(P\)の命題表記の場合の体系的考察は命題論理(propositional logic)で、\(p(s)\)の命題表記の場合の体系的考察は述語論理(predicate logic)と高階論理(higher-order logic)で、\(P_w\)の命題表記の場合の体系的考察は様態論理(modal logic)で行います。

例題 次の命題の主語、述語を指摘せよ。また、様態の副詞句があればこれも指摘せよ。

(1) 彼は早退した。

(2) 彼女は帰りに買い物をした。

(3) 彼は車で食事に行った。

(4) 彼と彼女は寿司屋に行った。

(5) 彼は翌朝車に乗って出勤した。

解答例

(1) 主語:「彼は」、述語:「早退した」

(2) 主語:「彼女は」、述語:「帰りに買い物をした」、あるいは述語:「買い物をした」、様態の副詞句:「帰りに」

(3) 主語:「彼は」、述語:「車で食事に行った」、あるいは述語:「食事に行った」、様態の副詞句:「車で」

(4) 主語:「彼と彼女は」、述語:「寿司屋に行った」

(5) 主語:「彼は」、述語:「翌朝車に乗って出勤した」、あるいは述語:「出勤した」、様態の副詞句:「翌朝」、「車に乗って」

問題

問題1 以下の文において属性命題と同一性命題を指摘せよ。

(1) 赤い車が駐車場に停まっている。

(2) \(67\)は素数である。

(3) \(x\)は\(23\)に等しい。

(4) 信号は赤である。

(5) 圧力は力を作用する面積で割った値に等しい。

解答例 (1) 属性命題 (2) 属性命題 (3) 同一性命題 (4) 属性命題 (5) 同一性命題

参考文献

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