形式論理学についての解説の記事です。
形式論理学で取り扱う命題について説明します。
命題とはなにか?
命題とは、「真」か「偽」のいずれかに定まる主張を指します。
形式論理学において、命題は論理的な推論や証明の基本単位です。
命題が命題と呼ばれるためには、その主張が客観的に「真」か「偽」かを判定できることが重要です。
真偽が定まっている主張
命題は、「真」または「偽」のどちらかに確定する文です。
例:
- 「2は偶数である」→ 真
- 「3は偶数である」→ 偽
- 「地球は太陽を周回している」→ 真
命題とは言えない文の例
一方で、命題とは言えない文も存在します。これらの文は、主観的な意見や質問、命令などで、真理値が判定できないため、命題として扱うことができません。
例:
- 「今日は良い天気だ」→ 主観的な感想であり、真理値が定まらない。
- 「一緒に行きませんか?」→ 質問文であり、真理値を持たない。
- 「このケーキは美味しい」→ 個人の感覚に基づくため、命題にはなりません。
命題の真理値
命題は、その真理値によって「真」または「偽」に分類されます。命題\(A\)の真理値は\(〚A〛\)と表され、命題\(A\)が真ならば \(〚A〛= 1\)、命題\(A\)が偽ならば \(〚A〛= 0\) です。
複数の命題が関係する場合、その論理的結合も命題の真理値に基づいて評価されます。
数学における命題の役割
数学では命題は論理的議論や証明において不可欠な役割を果たします。
命題が「真」か「偽」かを証明することが数学の中心的な活動です。
命題が証明されると、それは定理として他の命題を証明するために利用されます。
数学的命題の例
- 「自然数の和は自然数である」→ 真\(〚A〛= 1\)
- 「0で割ることはできない」→ 真\(〚A〛= 1\)
- 「すべての偶数は素数である」→ 偽\(〚A〛= 0\)
数学の証明における命題の活用
数学の証明では、既知の命題(それが真であることが証明されたもの)を利用して、新しい命題が真であることを導き出します。
例:\(\pi^\pi\)は無理数である
「\(\pi^\pi\)は無理数である」という文も命題です。この文は「真」または「偽」のどちらかに分類されるため、形式的には命題の定義を満たしています。ただし、\(\pi^\pi\)が無理数であるかどうかについては、現時点で数学的に決定されていないため、真理値がまだ不明です。したがって、この命題の真理値は現在のところ未解決です。
しかし、このような未解決の命題も形式論理においては命題として扱い、その真理値が将来的に解明される可能性があるという点で、依然として重要な議論の対象となります。
真理値の応用例
表計算ソフトやプログラミングでは、条件分岐の際に命題の真理値が使われています。具体的には、条件が**真理値(真 or 偽)**で評価され、それによって処理の流れが決まります。
表計算ソフトでの例
表計算ソフト(例: Excel)では、IF関数などが命題の真理値を利用します。命題が**真(True)**の場合に1つの結果、**偽(False)**の場合に別の結果が返されます。
IF(A1 > 10, "大きい", "小さい")
ここでは、セルA1の値が10より大きければ「大きい」が返され、それ以外の場合は「小さい」が返されます。この判断には、命題「A1 > 10」の真理値が使われています。
プログラミングでの例
プログラムでは、if文を使って命題の真理値に基づき異なる処理が実行されます。
x = 15
if x > 10: print(“xは10より大きい”)
else: print(“xは10以下”)
ここでも、「x > 10」という命題の真理値がTrueであれば「xは10より大きい」が出力され、Falseであれば「xは10以下」が出力されます。
これにより、表計算ソフトやプログラムは柔軟に条件に応じた処理を行うことができます。
まとめ
命題は、「真」または「偽」と評価できる主張であり、形式論理や数学の基礎となります。命題の真理値を明確にすることが、論理的な議論や数学的な証明において重要な役割を果たします。
参考文献
参考文献を紹介します.
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野矢茂樹著,『論理学』
長岡亮介著,『論理学で学ぶ数学』