酵素の性質と反応速度【高校生物の復習1.3.】

生物学基礎

1. 酵素とは

酵素は、生体内で化学反応を速める働きをするタンパク質です。

1.1 酵素の特徴

① 触媒としての働き

  • 自分自身は変化せずに、化学反応の速度を速める
  • 反応の前後で酵素の量や性質は変わらない
  • 何度も繰り返し使える

② 基質特異性

  • 酵素は特定の物質(基質)にだけ作用する
  • 例:マルターゼはマルトースだけを分解し、スクロースは分解しない

③ 穏やかな条件で働く

  • 常温・常圧で反応が進む
  • 生体内(体温・中性付近のpH)で効率よく働く

2. 酵素の構造と基質特異性

2.1 鍵と鍵穴モデル

酵素には活性部位という特定の部分があり、ここに基質が結合します。

酵素の活性部位 ⇔ 基質の形
(鍵穴)        (鍵)
  • 活性部位の形と基質の形がぴったり合うときだけ反応が起こる
  • この関係を「鍵と鍵穴」の関係という

2.2 酵素-基質複合体

反応は次の順序で進みます:

1. 酵素 + 基質 → 酵素-基質複合体
2. 酵素-基質複合体 → 酵素 + 生成物
3. 酵素は再び使われる

3. 温度が酵素に与える影響

3.1 温度と酵素の反応速度

酵素の働きは温度によって大きく変化します。

低温の場合

  • 分子の動きが遅くなる
  • 酵素と基質の衝突が少なくなる
  • 反応速度が遅くなる

最適温度

  • 酵素が最もよく働く温度
  • ヒトの酵素:約35〜40℃
  • この温度で反応速度が最大になる

高温の場合(40℃以上)

  • 酵素のタンパク質が変性する
  • 立体構造が壊れる
  • 活性部位の形が変わり、基質と結合できなくなる
  • 反応速度が急激に低下する
  • 不可逆的(元に戻らない)

4. pHが酵素に与える影響

4.1 pHと酵素の反応速度

酵素の働きはpH(水素イオン濃度)によっても変化します。

最適pH

各酵素には、最もよく働く最適pHがあります。

主な酵素の最適pH:

  • ペプシン(胃で働く):pH 約2(強い酸性)
  • トリプシン(小腸で働く):pH 約8(弱いアルカリ性)
  • アミラーゼ(だ液に含まれる):pH 約7(中性)

最適pHから外れると

  • 酵素のタンパク質の立体構造が変化
  • 活性部位の形が変わる
  • 基質との結合がうまくいかなくなる
  • 反応速度が低下する

4.2 生理的意義

  • 消化管の各部位で異なるpHがあり、それぞれに適した酵素が働く
  • ペプシン:胃液(pH約2)で働く
  • トリプシン:小腸(pH約8)で働く

5. 基質濃度と反応速度

5.1 基質濃度の影響

基質(反応する物質)の量を変えると、反応速度も変化します。

基質濃度が低いとき

  • 基質濃度を増やすと、反応速度も増加する
  • 酵素に対して基質が不足している状態

基質濃度が高いとき

  • 基質濃度を増やしても、反応速度はあまり増えない
  • すべての酵素が基質と結合している(飽和状態
  • これ以上速度は上がらない

ポイント:

  • 最初は比例関係(基質を増やすと速度も増える)
  • やがて頭打ち(それ以上増やしても速度は変わらない)

6. 酵素の阻害

酵素の働きを妨げる物質を阻害剤といいます。

6.1 競争的阻害

  • 阻害剤が基質と似た構造を持つ
  • 酵素の活性部位に阻害剤が結合する
  • 基質が結合できなくなる
  • 基質濃度を高くすれば、阻害を軽減できる
【正常な反応】
酵素 + 基質 → 反応が進む

【競争的阻害】
酵素 + 阻害剤 → 基質が入れない
      ↑
   基質と競争

6.2 非競争的阻害

  • 阻害剤が活性部位以外の場所に結合する
  • 酵素の立体構造が変化する
  • 活性部位の形が変わり、基質と結合できなくなる
  • 基質濃度を高くしても阻害は解除されない

7. 補酵素

7.1 補酵素とは

一部の酵素は、タンパク質だけでは働けず、補酵素という物質が必要です。

  • 補酵素は有機化合物(ビタミンなど)
  • 酵素と結合して、初めて活性を持つ

7.2 主な補酵素

  • NAD:ビタミンB₃(ナイアシン)から作られる
  • FAD:ビタミンB₂(リボフラビン)から作られる
  • 補酵素A:ビタミンB₅(パントテン酸)から作られる

これらは呼吸や光合成などで重要な役割を果たします。

8. 酵素の利用

8.1 日常生活での利用

① 洗剤

  • タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)
  • 脂肪分解酵素(リパーゼ)
  • 汚れを分解する

② 食品工業

  • アミラーゼ:でんぷんを糖に分解(甘味料製造)
  • ペクチナーゼ:果汁の製造
  • レンニン:チーズ製造

③ 医療

  • 血液検査での診断(酵素の量を測定)
  • 薬の開発(特定の酵素を阻害する薬)

9. まとめ

9.1 酵素の重要ポイント

  1. 酵素はタンパク質で、触媒として働く
  2. 基質特異性がある(特定の基質にだけ作用)
  3. 最適温度最適pHがある
  4. 高温では変性して働かなくなる
  5. 基質濃度が高いと飽和状態になる
  6. 阻害剤によって働きが妨げられる
  7. 補酵素が必要な酵素もある

10. 酵素の性質と反応速度:練習問題

第1部:括弧穴埋め問題

基礎編

問題1 酵素は生体内で化学反応を速める働きをする( ① )である。酵素は自分自身は変化せずに反応の速度を速める( ② )として働き、反応の前後で酵素の量や性質は( ③ )ため、何度も繰り返し使える。

問題2 酵素には( ④ )という特定の部分があり、ここに基質が結合する。この部分の形と基質の形がぴったり合うときだけ反応が起こり、この関係を「( ⑤ )と( ⑥ )」の関係という。

問題3 酵素が最もよく働く温度を( ⑦ )という。ヒトの酵素の場合、この温度は約( ⑧ )℃である。この温度を超えると、酵素のタンパク質が( ⑨ )し、立体構造が壊れて働かなくなる。

問題4 各酵素には、最もよく働く( ⑩ )がある。胃で働くペプシンの最適pHは約( ⑪ )であり、小腸で働くトリプシンの最適pHは約( ⑫ )である。

問題5 基質濃度を増やしていくと、やがてすべての酵素が基質と結合した状態になり、これ以上速度が上がらなくなる。この状態を( ⑬ )という。

応用編

問題6 酵素の働きを妨げる物質を( ⑭ )という。この物質が基質と似た構造を持ち、酵素の活性部位に結合して基質が入れなくなる阻害を( ⑮ )阻害という。

問題7 阻害剤が活性部位以外の場所に結合して、酵素の( ⑯ )が変化し、活性部位の形が変わって基質と結合できなくなる阻害を( ⑰ )阻害という。

問題8 一部の酵素は、タンパク質だけでは働けず、( ⑱ )という有機化合物が必要である。例えば、NADは( ⑲ )(ナイアシン)から作られ、FADは( ⑳ )(リボフラビン)から作られる。


第2部:正誤判定問題

以下の文が正しければ○、誤っていれば×を答え、×の場合は正しい内容に訂正しなさい。

基礎編

問題1 酵素は反応の前後で自身も変化するため、一度しか使えない。

問題2 酵素は特定の物質(基質)にだけ作用する性質を持ち、これを基質特異性という。

問題3 ヒトの酵素は60℃付近で最もよく働く。

問題4 高温で酵素が変性すると、温度を下げれば元の構造に戻り、再び働くようになる。

問題5 ペプシンは胃で働く酵素で、強い酸性条件(pH約2)で最もよく働く。

問題6 だ液に含まれるアミラーゼの最適pHは約7(中性)である。

問題7 基質濃度が低いときは、基質濃度を増やしても反応速度は変わらない。

問題8 基質濃度が十分に高くなると、すべての酵素が基質と結合して飽和状態になり、それ以上速度は上がらなくなる。

応用編

問題9 競争的阻害では、基質濃度を高くしても阻害は解除されない。

問題10 非競争的阻害では、阻害剤が活性部位に結合して基質と競争する。

問題11 競争的阻害では、阻害剤と基質が活性部位を奪い合うため、基質濃度を十分高くすれば阻害を軽減できる。

問題12 補酵素はすべての酵素に必要である。

問題13 NADはビタミンB₃(ナイアシン)から作られる補酵素で、呼吸などで重要な役割を果たす。

問題14 酵素は常温・常圧という穏やかな条件で効率よく働く。

問題15 酵素の活性部位と基質の形は完全に一致する必要はなく、どんな形の基質でも結合できる。


第3部:グラフ読解問題

問題1 温度と酵素の反応速度の関係を示すグラフの形として正しいものはどれか。

A. 温度が上がるほど、反応速度も比例して上がり続ける B. 最適温度まで上昇し、その後急激に低下する(山型) C. 温度が上がるほど、反応速度は低下し続ける D. 温度によらず、反応速度は一定である

問題2 基質濃度と反応速度の関係を示すグラフの形として正しいものはどれか。

A. 基質濃度に比例して、反応速度も直線的に上昇し続ける B. 最初は比例的に上昇し、やがて一定値に近づく(曲線) C. 基質濃度が高くなると、反応速度は低下する D. 基質濃度によらず、反応速度は一定である

問題3 pHと酵素の反応速度の関係について、次の記述のうち正しいものはどれか。

A. すべての酵素は中性(pH7)で最もよく働く B. 酵素によって最適pHは異なり、山型のグラフになる C. pHが高いほど、すべての酵素の反応速度は上がる D. pHは酵素の反応速度に影響を与えない


解答編

第1部:括弧穴埋め問題 解答

基礎編

  • ① タンパク質
  • ② 触媒
  • ③ 変わらない
  • ④ 活性部位
  • ⑤ 鍵
  • ⑥ 鍵穴(順不同可)
  • ⑦ 最適温度
  • ⑧ 35〜40(または40)
  • ⑨ 変性
  • ⑩ 最適pH
  • ⑪ 2
  • ⑫ 8
  • ⑬ 飽和状態

応用編

  • ⑭ 阻害剤
  • ⑮ 競争的
  • ⑯ 立体構造
  • ⑰ 非競争的
  • ⑱ 補酵素
  • ⑲ ビタミンB₃
  • ⑳ ビタミンB₂

第2部:正誤判定問題 解答

基礎編

  1. × → 酵素は反応の前後で自身は変化しないため、何度も繰り返し使える。
  2. × → ヒトの酵素は35〜40℃付近で最もよく働く。
  3. × → 高温で変性した酵素は不可逆的に失活し、温度を下げても元に戻らない。
  4. × → 基質濃度が低いときは、基質濃度を増やすと反応速度も増加する。

応用編 9. × → 競争的阻害では、基質濃度を高くすれば阻害を軽減できる。 10. × → 非競争的阻害では、阻害剤が活性部位以外の場所に結合する。 11. ○ 12. × → 補酵素が必要なのは一部の酵素だけである。 13. ○ 14. ○ 15. × → 酵素の活性部位と基質の形はぴったり合う必要があり、これを「鍵と鍵穴」の関係という。

第3部:グラフ読解問題 解答

  1. B – 最適温度まで上昇し、その後急激に低下する(山型)
  2. B – 最初は比例的に上昇し、やがて一定値に近づく(曲線)
  3. B – 酵素によって最適pHは異なり、山型のグラフになる

11.参考文献

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