生命活動を支える生体物質は、主にタンパク質、脂質、糖質、核酸の4つに分類されます。これらは生体高分子として、細胞の構造を作り、エネルギー源となり、遺伝情報を保存・伝達するなど、多様な役割を果たしています。
1.タンパク質(Proteins)
1.1 構造
タンパク質はアミノ酸が多数連結した高分子化合物です。
基本構造:
- アミノ酸は、中心炭素にアミノ基(-NH₂)、カルボキシル基(-COOH)、水素原子、側鎖(R基)が結合した構造を持ちます
- 生体を構成するアミノ酸は約20種類で、側鎖の違いによって性質が異なります
- アミノ酸同士はペプチド結合で連結し、長い鎖状構造を形成します
階層構造:
- 一次構造: アミノ酸の配列順序
- 二次構造: αヘリックスやβシートなど、規則的な立体構造
- 三次構造: 二次構造がさらに折りたたまれた三次元構造
- 四次構造: 複数のポリペプチド鎖が会合した複合体
1.2 役割
タンパク質は生命活動において最も多様な機能を持ちます。
酵素としての機能:
- 化学反応を触媒し、代謝を円滑に進めます
- 例: 消化酵素(ペプシン、アミラーゼ)、代謝酵素
構造タンパク質:
- 細胞や組織の構造を支えます
- 例: コラーゲン(結合組織)、ケラチン(毛髪・爪)、アクチン・ミオシン(筋肉)
輸送・貯蔵:
- 物質を運搬したり蓄えたりします
- 例: ヘモグロビン(酸素輸送)、フェリチン(鉄貯蔵)
防御機能:
- 免疫系を構成します
- 例: 抗体(免疫グロブリン)
調節機能:
- ホルモンや受容体として情報伝達を担います
- 例: インスリン、成長ホルモン
運動機能:
- 細胞や生物の運動を可能にします
- 例: 筋収縮、繊毛運動
2.脂質(Lipids)
2.1 構造
脂質は水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい疎水性の物質群です。
主な種類:
中性脂肪(トリアシルグリセロール):
- グリセロール1分子に脂肪酸3分子が結合した構造
- 最も一般的なエネルギー貯蔵形態
リン脂質:
- グリセロールに脂肪酸2分子とリン酸基が結合
- 親水性の頭部と疎水性の尾部を持つ両親媒性分子
- 例: ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン
ステロイド:
- 四つの炭素環が融合した構造
- 例: コレステロール、性ホルモン、副腎皮質ホルモン
糖脂質:
- 脂質に糖が結合した構造
- 細胞膜の外側に存在
2.2 役割
エネルギー源・貯蔵:
- 1グラムあたり約9kcalと、糖質やタンパク質の2倍以上のエネルギーを持ちます
- 脂肪組織に蓄積され、長期的なエネルギー貯蔵に利用されます
細胞膜の構成:
- リン脂質は脂質二重層を形成し、細胞膜の基本構造を作ります
- 膜の流動性や選択的透過性を調節します
ホルモンの原料:
- ステロイドホルモン(性ホルモン、副腎皮質ホルモン)の前駆体となります
ビタミンの構成:
- 脂溶性ビタミン(A、D、E、K)として機能します
保温・臓器保護:
- 皮下脂肪として体温を保持し、内臓を物理的衝撃から守ります
細胞認識:
- 糖脂質は細胞表面で細胞認識のマーカーとして働きます
3.糖質(炭水化物、Carbohydrates)
3.1 構造
糖質は一般式(CH₂O)ₙで表される化合物で、単糖を基本単位とします。
分類:
単糖:
- これ以上加水分解されない最小単位
- 炭素数によって分類: 三炭糖、五炭糖(リボース、デオキシリボース)、六炭糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース)
- グルコースは最も重要なエネルギー源
二糖:
- 単糖が2個結合したもの
- 例: スクロース(ショ糖=グルコース+フルクトース)、マルトース(麦芽糖=グルコース2個)、ラクトース(乳糖=グルコース+ガラクトース)
多糖:
- 単糖が多数結合した高分子
- 例: デンプン、グリコーゲン(貯蔵多糖)、セルロース、キチン(構造多糖)
3.2 役割
エネルギー源:
- グルコースは細胞の主要なエネルギー源で、解糖系やクエン酸回路でATPを産生します
- 脳や赤血球はグルコースを主なエネルギー源とします
エネルギー貯蔵:
- 動物ではグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵されます
- 植物ではデンプンとして貯蔵されます
構造成分:
- セルロースは植物細胞壁の主成分です
- キチンは節足動物の外骨格や菌類の細胞壁を構成します
- ペプチドグリカンは細菌の細胞壁を構成します
核酸の構成成分:
- リボースやデオキシリボースはRNAやDNAの骨格を形成します
細胞認識:
- 糖タンパク質や糖脂質として細胞表面で認識マーカーとして機能します
- 血液型物質も糖鎖の違いによって決まります
4. 核酸(Nucleic Acids)
4.1 構造
核酸はヌクレオチドが多数連結した高分子で、DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の2種類があります。
ヌクレオチドの構成:
- 五炭糖(リボースまたはデオキシリボース)
- リン酸基
- 塩基(窒素を含む環状化合物)
塩基の種類:
- プリン塩基: アデニン(A)、グアニン(G)
- ピリミジン塩基: シトシン(C)、チミン(T、DNAのみ)、ウラシル(U、RNAのみ)
DNA構造:
- 二重らせん構造(ワトソン・クリックモデル)
- 2本のポリヌクレオチド鎖が相補的塩基対(A-T、G-C)で結合
- 遺伝情報を安定に保存
RNA構造:
- 通常は一本鎖構造
- 部分的に二次構造を形成することもあります
- 種類: メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)など
4.2 役割
遺伝情報の保存(DNA):
- 生物の設計図として遺伝情報を保存します
- 細胞分裂時に正確に複製され、次世代へ伝達されます
遺伝情報の発現(RNA):
- mRNA: DNAの遺伝情報をリボソームへ運びます(転写)
- tRNA: アミノ酸をリボソームへ運び、タンパク質合成に関与します(翻訳)
- rRNA: リボソームの構成成分として、タンパク質合成の場を提供します
調節機能(RNA):
- マイクロRNA(miRNA)や長鎖非コードRNA(lncRNA)などが遺伝子発現を調節します
エネルギー代謝:
- ATP(アデノシン三リン酸)はエネルギー通貨として、細胞内のエネルギー伝達に中心的役割を果たします
- NAD⁺、FADなどの補酵素として電子伝達に関与します
細胞内シグナル伝達:
- cAMP(環状AMP)やcGMPなどのセカンドメッセンジャーとして機能します
5. 生体物質の相互関係
これら4つの生体物質は互いに関連し合い、生命活動を支えています。
代謝における変換:
- 糖質、脂質、タンパク質は代謝経路を通じて相互に変換可能です
- 過剰な糖質は脂質として貯蔵され、必要時にはタンパク質もエネルギー源となります
複合分子の形成:
- 糖タンパク質(タンパク質+糖質): 細胞膜受容体、抗体など
- 糖脂質(脂質+糖質): 細胞膜の認識マーカー
- リポタンパク質(脂質+タンパク質): コレステロールや中性脂肪の輸送
- ヌクレオタンパク質(核酸+タンパク質): クロマチン、リボソーム
遺伝子発現の流れ:
- DNA → RNA → タンパク質という「セントラルドグマ」により、遺伝情報が生命活動に変換されます
エネルギー代謝の統合:
- 糖質、脂質、タンパク質の分解はすべて最終的にクエン酸回路と電子伝達系に集約され、ATPを産生します
6.生体物質 練習問題
【穴埋め問題】
- タンパク質は( )が多数連結した高分子化合物である。
- アミノ酸の中心炭素には、アミノ基、カルボキシル基、水素原子、そして( )が結合している。
- 生体を構成するアミノ酸は約( )種類存在する。
- アミノ酸同士は( )結合で連結する。
- タンパク質の階層構造のうち、アミノ酸の配列順序を( )構造という。
- αヘリックスやβシートなどの規則的な立体構造を( )構造という。
- 酸素を輸送するタンパク質は( )である。
- 免疫系で働くタンパク質は( )と呼ばれる。
- 脂質は水に溶け( )く、有機溶媒に溶け( )い性質を持つ。
- グリセロール1分子に脂肪酸3分子が結合した脂質を( )という。
- 親水性の頭部と疎水性の尾部を持ち、細胞膜の基本構造を作る脂質は( )である。
- リン脂質は細胞膜で( )を形成する。
- 四つの炭素環が融合した構造を持つ脂質を( )という。
- 脂質は1グラムあたり約( )kcalのエネルギーを持つ。
- 糖質は一般式( )で表される。
- これ以上加水分解されない糖の最小単位を( )という。
- 細胞の主要なエネルギー源となる六炭糖は( )である。
- グルコース2個が結合した二糖は( )である。
- 動物において糖をエネルギー貯蔵する多糖は( )で、主に肝臓や筋肉に貯蔵される。
- 植物細胞壁の主成分である多糖は( )である。
- 節足動物の外骨格を構成する多糖は( )である。
- 核酸は( )が多数連結した高分子である。
- ヌクレオチドは、五炭糖、リン酸基、そして( )の3つで構成される。
- DNAに含まれる4種類の塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、そして( )である。
- RNAではチミンの代わりに( )が含まれる。
- DNAは( )らせん構造をとる。
- DNAでアデニンと相補的に結合する塩基は( )である。
- DNAの遺伝情報をリボソームへ運ぶRNAは( )である。
- アミノ酸をリボソームへ運ぶRNAは( )である。
- 細胞内のエネルギー通貨として機能するヌクレオチドは( )である。
- 遺伝情報の流れ「DNA → RNA → タンパク質」を( )という。
- タンパク質と糖質が結合した複合分子を( )という。
- 脂質とタンパク質が結合し、コレステロールや中性脂肪を輸送する複合分子を( )という。
【正誤判定問題】
以下の記述が正しければ○、誤っていれば×を答えなさい。
- ( )タンパク質の四次構造とは、複数のポリペプチド鎖が会合した複合体のことである。
- ( )酵素はすべてタンパク質である。
- ( )コラーゲンは筋肉の収縮に関わる運動タンパク質である。
- ( )ケラチンは毛髪や爪を構成する構造タンパク質である。
- ( )インスリンはホルモンとして働くタンパク質である。
- ( )中性脂肪は糖質やタンパク質よりも単位質量あたりのエネルギー量が少ない。
- ( )リン脂質は両親媒性分子であり、親水性と疎水性の両方の性質を持つ。
- ( )コレステロールはステロイドの一種である。
- ( )糖脂質は細胞膜の内側に主に存在し、エネルギー貯蔵に関わる。
- ( )脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kが含まれる。
- ( )グルコースは五炭糖である。
- ( )スクロース(ショ糖)はグルコースとフルクトースが結合した二糖である。
- ( )デンプンは動物の主要なエネルギー貯蔵多糖である。
- ( )セルロースは人間の消化酵素では分解できない。
- ( )脳や赤血球はグルコースを主なエネルギー源とする。
- ( )リボースとデオキシリボースは核酸の構成成分である。
- ( )DNAは通常一本鎖構造をとる。
- ( )RNAにはウラシルが含まれるが、チミンは含まれない。
- ( )DNAの二重らせんでは、アデニンはグアニンと塩基対を形成する。
- ( )mRNAは転写によってDNAから合成される。
- ( )tRNAはリボソームの構成成分である。
- ( )ATPはアデノシン三リン酸の略称で、エネルギーの貯蔵・伝達に中心的役割を果たす。
- ( )糖質、脂質、タンパク質は代謝経路を通じて相互に変換可能である。
- ( )過剰な糖質は体内で脂質として貯蔵される。
- ( )糖タンパク質は細胞膜受容体や抗体として機能する。
- ( )血液型物質は糖鎖の違いによって決まる。
- ( )セントラルドグマとは「タンパク質 → RNA → DNA」という遺伝情報の流れのことである。
穴埋め問題 解答
- アミノ酸
- 側鎖(R基)
- 20
- ペプチド
- 一次
- 二次
- ヘモグロビン
- 抗体(免疫グロブリン)
- にく / やす
- 中性脂肪(トリアシルグリセロール)
- リン脂質
- 脂質二重層
- ステロイド
- 9
- (CH₂O)ₙ
- 単糖
- グルコース
- マルトース(麦芽糖)
- グリコーゲン
- セルロース
- キチン
- ヌクレオチド
- 塩基
- チミン
- ウラシル
- 二重
- チミン
- mRNA(メッセンジャーRNA)
- tRNA(トランスファーRNA)
- ATP(アデノシン三リン酸)
- セントラルドグマ
- 糖タンパク質
- リポタンパク質
正誤判定問題 解答
- ○
- ○
- × (コラーゲンは結合組織の構造タンパク質。筋肉の収縮に関わるのはアクチンとミオシン)
- ○
- ○
- × (脂質は糖質やタンパク質の2倍以上のエネルギーを持つ)
- ○
- ○
- × (糖脂質は細胞膜の外側に存在し、細胞認識に関わる)
- ○
- × (グルコースは六炭糖)
- ○
- × (デンプンは植物の貯蔵多糖。動物はグリコーゲン)
- ○
- ○
- ○
- × (DNAは二重らせん構造。一本鎖なのはRNA)
- ○
- × (アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと塩基対を形成)
- ○
- × (tRNAはアミノ酸を運ぶ。リボソームの構成成分はrRNA)
- ○
- ○
- ○
- ○
- ○
- × (セントラルドグマは「DNA → RNA → タンパク質」)
7.参考文献
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