形式論理学の学習の記事です。本記事では命題の真理値について説明します。
真理値
命題の真理値(truth value)とは、命題の真偽に値を対応させたものですが、ある命題が真である場合はその命題の真理値は\(1\)(あるいは\(T\))、偽である場合はその真理値は\(0\)(あるいは\(F\))です。
多くの論理学の書籍では\(T,F\)を使うことが多いですが、本稿では\(1,0\)を用います。
命題\(P\)の真理値を\(\left[ \! \left[ P \right] \! \right]\)とかいたり、\(Val(P)\)とかいたりしますが、本稿では\(\left[ \! \left[ P \right] \! \right]\)を用います。
様態の副詞句を世界\(w\)として考えている命題については、その真理値を世界\(w\)における真理値、\(\left[ \! \left[ P \right] \! \right]_w\)や\(Val_w(P)\)で表します。世界によって真理値が異なるという捉え方になります。
例題 次の命題の真理値を求めよ。
(1) みんな毎日朝ごはんを食べている。
(2) \(\sqrt{2}\)は有理数である。
(3) 質量の大きい物体ほど速く落下する。
(4) 酸化とは物質が酸素と結びつく反応である。
(5) ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーをつくる。
解答例
(1) 偽 (2) 偽 (3) 偽 (4) 偽(物質が電子を失う反応である) (5) 真
例題 次の命題について真理値を求めよ。
\(P\):水は100℃で沸騰する、\(w_1\):大気圧下で、\(w_2\):高圧下で
解答例 \(\left[ \! \left[ P \right] \! \right]_{w_1}=1, \space \left[ \! \left[ P \right] \! \right]_{w_2}=0\)
高圧下では沸点は上がる。
述語と真理値
真理値は命題が真であるか偽であるかを表す指標と言えます。
他方で、命題を主語と述語で表した場合、すなわち\(\left[ \! \left[ p(s) \right] \! \right]=1 \space or \space 0\)の場合、述語において新たな意味が生まれます。
真理値が\(1\)であるような主語を選ぶ、という意味合いを述語がもつようになります。
つまり、\(\left[ \! \left[ p(s_1) \right] \! \right]=1\)であるとき、\(s_1 \in S_p\)として\(s_1\)を選び、\(\left[ \! \left[ p(s_2) \right] \! \right]=0\)であるとき、\(s_2 \notin S_p\)として\(s_2\)を除外していると考えられます。
述語自体は言葉としての意味がありますが、論理学においては主語を集合の要素として選択する働きがあり、述語の形式的な意味であると考えられます。
このように、形式論理学においては言葉の意味以外の抽象的な意味を発見する楽しみがあります。
例題 次の括弧穴埋問題を論理式で表せ。
次の文の括弧に当てはまる言葉を語群から選べ。
( )は植物細胞だけに見られる細胞内小器官である。
語群:細胞核、ゴルジ体、葉緑体、中心体、粗面小胞体
解答例
命題を\(p(s)\)とし、語群を細胞核:\(s_1\)、ゴルジ体:\(s_2\)、葉緑体:\(s_3\)、中心体:\(s_4\)、粗面小胞体:\(s_5\)とする。
\(\left[ \! \left[ p(s_1) \right] \! \right]=0,\)
\(\left[ \! \left[ p(s_2) \right] \! \right]=0,\)
\(\left[ \! \left[ p(s_3) \right] \! \right]=1,\)
\(\left[ \! \left[ p(s_4) \right] \! \right]=0,\)
\(\left[ \! \left[ p(s_5) \right] \! \right]=0\)
問題
問題1 以下の文において真偽をしらべよ。
(1) 朝には太陽が東から上る。
(2) 水は0℃で必ず凍る。
(3) \(6\)は素数である。
(4) 真空中ではすべての物体は同じ加速度で落下する。
(5) 水は有機化合物である。
(6) インフレーションは物価が上昇する現象である。
(7) 需要が増えると価格は下がる。
解答例 (1) 真 (2) 偽(圧力などによる) (3) 偽 (4) 真 (5) 偽 (6) 真 (7) 偽
参考文献
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