数と四則演算【解析学1】

解析学

自然数・整数・有理数・実数と四則演算について解説します.

自然数

自然数は,この記事では\(0\)を含めます.

\(\mathbb{N}=\{0, 1, 2, 3, …\}\)

自然数は,\(0\)に\(1\)を加えていくことで自然に生成されます.

自然数では加法(足し算)と乗法(掛け算)が可能で,その結果は自然数です.

\(m, n \in \mathbb{N}, m + n \in \mathbb{N}\)

\(m, n \in \mathbb{N}, mn \in \mathbb{N}\)

これを,自然数は加法と乗法で閉じている,といいます.

減法や除法では,差や比が自然数の範囲外になるケースがあり,閉じていません.

整数

整数\(\mathbb{Z}\)を集合として表すと次のようになります.

\(\mathbb{Z}=\{0, \pm 1, \pm 2, \pm 3, …\}\)

整数は加法,乗法に加えて,減法でも閉じています.

ただし,除法については閉じていません.

有理数

整数の比で表される数を有理数といいます.

\(\mathbb{Q} = \{r \mid r = \displaystyle\frac{m}{n}, (m, n \in \mathbb{Z}, n \neq 0)\}\)

除法では\(0\)で除することは定義されないので,注意が必要です.

\(n=1\)のとき,\(\displaystyle\frac{m}{n}=m\)となり,整数になりますので,整数は有理数に含まれます.

有理数は,加法,減法,乗法,除法で閉じています.

\(r, s \in \mathbb{Q}, r + s \in \mathbb{Q}, r-s \in \mathbb{Q},\)

\(rs \in \mathbb{Q}, \displaystyle\frac{r}{s} \in \mathbb{Q}, (s \neq 0)\)

実数

実数は有理数と無理数からなります.

無理数は,整数の比で表せない実数で,たとえば,\(\sqrt{2}\), \(\pi\)(円周率), \(e\)(自然対数の底)があります.

実数は,加法,減法,乗法,除法で閉じています.

\(x, y \in \mathbb{R}, x + y \in \mathbb{R}, x-y \in \mathbb{R},\)

\(xy \in \mathbb{R}, \displaystyle\frac{x}{y} \in \mathbb{R}, (y \neq 0)\)

問題

問題1

(1) 有理数が減法で閉じていることを利用して,有理数と無理数の和が無理数であることを示せ.

(2) 有理数が除法で閉じていることを利用して,\(0\)でない有理数と無理数の積が無理数であることを示せ.

解答例

(1) 有理数を\(r\),無理数を\(x\)とする.\(r+x=s\)とし,\(s\)が有理数であると仮定する.

\(x=s-r\)と変形でき,右辺は有理数であるが,左辺は無理数であるから,矛盾する.

したがって,\(s\)は有理数ではない。有理数と無理数の和は無理数である.

(2) \(0\)でない有理数を\(r\),無理数を\(x\)とする.\(rx=s\)とし,\(s\)が有理数であると仮定する.

\(x=\displaystyle\frac{s}{r}\)と変形でき,右辺は有理数であるが,左辺は無理数であるから,矛盾する.

したがって,\(s\)は有理数ではない.有理数と無理数の積は無理数である.

問題2

(1) \(\sqrt{2}\)が無理数であることを,有理数と仮定して背理法で示せ.

(2) \(\sqrt{2}+\sqrt{3}\)が無理数であることを示せ.

解答例

(1) \(\sqrt{2}\)が有理数であると仮定する.

\(\sqrt{2}=\displaystyle\frac{m}{n}, m,n \in \mathbb{Z}, n \neq 0\)とする.

必要であれば約分を行い,\(m\),\(n\)は互いに素であるとしてよい.

上式の右辺・左辺のそれぞれを平方して,

\(2=\displaystyle\frac{m^2}{n^2}\)

\(m^2=2n^2\)

\(m^2\)は\(2\)の倍数となり,\(m\)も\(2\)の倍数である.

\(m=2k, k \in \mathbb{Z}\)とおける.

\(4k^2=2n^2\)

\(n^2=2k^2\)

\(n^2\)は\(2\)の倍数であり,\(n\)も\(2\)の倍数となる.

\(m\)も\(n\)も\(2\)の倍数となり,互いに素であることに矛盾する.

したがって,\(\sqrt{2}\)は無理数である.

(2) \(\sqrt{2}+\sqrt{3}=a\)とする.

両辺を二乗して,

\((\sqrt{2}+\sqrt{3})^2=2+2\sqrt{6}+3=5+2\sqrt{6}=a^2\)

\(\sqrt{6}\)について解いて,

\(\sqrt{6}=\displaystyle\frac{a^2-5}{2} \tag{*}\)

ここで,\(\sqrt{6}\)が有理数であると仮定する.

\(\sqrt{6}=\displaystyle\frac{m}{n}, m, n \in \mathbb{Z}, n \neq 0\)とおける.

\(m\),\(n\)は互いに素であるとしてよい.

両辺を二乗して,

\(6=\displaystyle\left(\frac{m}{n}\right)^2=\displaystyle\frac{m^2}{n^2}\)

\(6n^2=m^2\)

\(m\)は\(2\)の倍数なので,\(m=2k, k \in \mathbb{Z}\)とおける.

\(6n^2=4k^2\)

\(3n^2=2k^2\)

\(2\)と\(3\)は互いに素だから,\(n^2\)は\(2\)の倍数であり,\(n\)も\(2\)の倍数.

これは\(m\),\(n\)が互いに素であることに矛盾する.

したがって,\(\sqrt{6}\)は無理数である.

\((*)\)式に戻り,左辺が無理数であるから,右辺も無理数でないといけないが,\(a^2\)が有理数ならば,右辺は有理数となり,矛盾する.

それゆえ,\(a^2\)は無理数で,\(a\)は二乗して無理数となるので,\(a\)自身も無理数である.

参考文献

解析学に関する参考文献を以下に挙げます.

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松坂和夫著,『解析入門』

杉浦光夫著,『解析入門I』

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